秘湯シリーズ17〜深山の谷間に透明豊富な源泉が湧く、福島県甲子温泉大黒屋〜

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1384年に発見され、白河藩主松平定信が愛した温泉です。山塊の谷間にある重厚な建物、単純温泉で淡白適温の湯が豊富に溢れる名湯です。シンプルで清潔な宿、部屋から眺める対岸の森は圧巻、温泉のきわめつけは谷底に沸く大岩風呂です。その横にある櫻の湯がさらにすばらしい。

甲子温泉大黒屋

正式名称は「元湯甲子(かし)温泉旅館大黒屋」ですが、省略してここでは「大黒屋」ということにします。福島県国道293号線の甲子トンネルの東側の谷間にあります。

 

大黒屋の建物はなんだか要塞のような面構えで、色はダークブラウン。秘湯にはこの色が似合います。巨大に見えますが、部屋は13室です。

玄関に入ると帳場とロビーになっています。調度品はシックで、床は磨き上げられています。

天井に古民家の梁が使われていて重厚です。窓の向こうには、こちらに押し寄せるような鬱蒼とした山の緑。人工物の一切ない自然の圧倒的な風景はこの宿の経営資源ですね。

全体の印象ですが、建物、廊下、部屋、調度全てがセンス良くシンプルです。宿の風格と相まって宿の方の気持ちがそこら中に漂っている気がします。

部屋は広く、窓際には広縁もあり、しっかりした調度でくつろげます。窓の外はロビー同様、右を見ても左を見ても山だらけです。紅葉の時、雪景色いずれも圧巻に違いありません。

大岩風呂

母屋から長い階段を渓流に下りていくと、切れ込んだ谷川のかたわらに大岩風呂が佇んでいます。ここから母屋は見えないので、なんだか孤立した秘湯のようです。橋の下を流れるのは阿武隈川の源流です。

湯殿の暖簾をくぐって中に入ると目の前に巨大な湯舟が現れます。高い天井を丈夫な梁が支えています。

「大岩風呂」は、奥行き15m、幅が3mくらい、つまり小さなプールサイズです。ざっと20人はゆうに入れる大きさで、深さは最大で1.2mあるそうです。やはり、泳いでしまいました。

実は中央の底に大きな岩が二つあります。この岩に触れると子宝に恵まれるという言い伝えがあるそうです。でも、この岩は泳ぐには邪魔です。思うに、泳がせないためにこの岩をあえて置いたのかもしれませんね。

源泉のそそぎ口は昔のまま、岩の間から出ています。そこには小さな鳥居も設けられています。単純温泉なのでご覧の通りの透明さです。何か海のようにも見えて感動ものです。

源泉温度は約43℃、湯舟の温度は40℃くらいで最高の温度です。ここに身を任せれば愉悦の異空間です。ただ、大岩風呂は混浴でゆゆ着はだめです。それで、女性専用タイムがあります。

櫻の湯

大岩風呂の右となりに女性用の「櫻の湯」があります。時間によって男性も入れます。

ドアを開けたとたん、湯船を見て固まってしまいました。大岩風呂より小さいですが、聞こえるのは注がれる静かな湯の音、外の森を通り抜けるかすかな風の音だけです。

底には丸い小石が敷き詰められていて、この感触がたまりません。中央にはやはり子宝石のようなものがあります。

この空間はインスタレーションです。インスタレーションとは、wikipediaによると「絵画・彫刻・映像・写真などと並ぶ現代美術における表現手法・ジャンルの一つで、 ある特定の室内や屋外などにオブジェや装置を置いて、作家の意向に沿って空間を構成し変化・異化させ、場所や空間全体を作品として体験させる芸術」です。まさにこれです。

内湯と露天風呂

母屋の建物に続いて「恵比須の湯」があります。こちらも男女別で入れ替わり制になっています。男性用の内風呂です。窓に沿って細長い湯船です。一面ガラスなのですこぶる開放的です。湯船から注がれる湯と外を見ながらまったり楽しみます。

外に出るとややこじんまりした露天風呂があります。

透明で豊富な湯量、爽やかです。

こちらは女性用の露天風呂です。露天風呂には内湯を出て石畳をあるいて行きます。柔らかな灯りがともり心が落ち着きます。高級感のある佇まいです。

結論から言うと女性用の方が断然いいです。大黒屋は、女性視点からの細やかさ、清潔さ、上品さにこだわる宿ですね。

温泉について言うと単純温泉とカルシウム・ナトリウムー硫酸塩温泉の二つです。大黒屋は一人当たりの湯量が1リットル以上というような基準を設けて、新鮮な湯を供給することに心がけています。源泉量からすると満室でも一人当たりの源泉量が6リットル/分もあります。

洗練された料理

整然と綺麗に準備された料理、野菜サラダはワイングラス入りでした。地元の牛肉の蒸し物は火が通ってきたら、半レアでいただきます。これが美味です。

この後、料理が次々に出てきますが、量が丁度よく、盛り付けも上品、クオリティも高いです。宿全体のテイストが「高級」と分類するよりも「上品」というジャンルです。

こちらは朝食で野菜が多くてヘルシーです。一番美味しかったのは自家製豆腐。

宿の簡潔コンセプトで食事も欲張らずスマートな感じです。

大黒屋の印象

受付の方(若女将さんかな)、従業員の方が皆さんがとても感じがよく丁寧で気遣いがあります。ところで、温泉旅館で風呂の掃除されている方々は縁の下を支えられていて、どちらかというと寡黙でひたすらという方が多い。大黒屋の方は(早朝でしたが)「おはようございます」と爽やかな笑顔で声をかけていただき、ちょっと感動してしまいました。

全体のテイストが高級という分類ではなく上品です。あえて例えれば無印旅館(無印とはなんの関係もありませんが)。館主が目指したい姿は、上品・控えめのコンセプトでしょうか。

是非訪れたい南湖公園

白河市南湖公園は白河藩主松平定信が1801年に武士・庶民が共に楽しめる地として塀・柵を設けず造営しました。「公園」としては日本初です。

定信公は第8代将軍徳川吉宗の孫にあたり、幼少期の第11代将軍家斉の将軍補佐筆頭として寛政の改革を実行しました。

自らは質素倹約に努め、貧しい者の税を免除し、幕政改革では、人材登用、綱紀粛正、財政整理、備荒儲富、風俗匡正等々まるで現代の経営改革そのものです。すぐれた経営者であったことがうかがえます。定信公は業務の傍らこの甲子温泉で疲れを癒したわけですから、現代人と同じですね。

南湖公園はとても静かな公園です。周囲をぐるっと一周する散策路があります。

是非訪れていただきたいスポットです。温泉と癒しのセットでどうぞ。

(この記事はブログ「秘湯感動紀行」を加筆修正再編集したものです。お気に召せばどうぞお越しくださいな。)

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2017年5月1日

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