秘湯シリーズ13〜和製オーベルジュと言われる西伊豆の民宿、温泉も料理も一級品の西伊豆岩地温泉・かいとく丸〜

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民宿かいとく丸は西伊豆の小さな湾を囲む海辺の集落にあります。一日三組、温泉は二つの貸切風呂のみで溢れる源泉の掛け流しです。

料理は和製オーベルジュと言われる美食の宿で、パブリックスペースは建築家・中村好文氏によるもの。料理も建築もシンプルさと素材重視など相通ずるものがあります。

はじめに

秘湯というものは山奥の一軒家であるべしという固定観念がありますが、今回は、逆バリで海辺の秘湯を紹介します。といっても海辺の集落にあるので秘湯ではありません。

「夏は海」という人と「冬こそ海」という人種がいます。後者は海の味覚が凝縮された冬の魚介類に気もそぞろになる人種です。

料理のおいいしい日本三大民宿の一つと言われる西伊豆松崎町・岩地温泉の民宿「かいとく丸」を紹介します。もちろん温泉も豊富な源泉を掛け流す一級品です。

西伊豆地方は紺碧の海

西伊豆地方は目の前が駿河湾です。海沿いを走る道路から群青の海に富士山が浮かぶ絶景です。

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松崎町を過ぎてほどなく岩地(いわち)に着きます。ここが岩地温泉です。

岩地温泉は海辺の小さな街

岩地は目の前が湾になっています。対岸の岸壁がフィリピン・エルニドのミニチュアのようにも見えて、見ようによってはちょっとしたリゾート地です。岩地全部を「静かな」リゾート地に改造したら、日本屈指の海浜リゾートになるでしょう。

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静かな集落で人影はまばらですが、街を散策していると出会った方々からは話しかけて頂き土地にまつわるお話を聞くことが出来ました。人々がフランクなのは豊かな土地だからでしょう。

岩地の湾を左手に回ると埠頭(防潮堤)があって船がつながれていました。青というより少し緑かかった藍色で、海はこんなに透き通っていたんだなと久々に心洗われます。

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岩地温泉・かいとく丸

街中を道順にしたがって下ると民宿「かいとく丸」がありました。手前の二階の建物は黒く、奥の方は三階建ての白い建物です。

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一階は昭和初期風の古い建物のように見えます。

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しかし、玄関に入ると雰囲気が一変します。すぐ左にはミニ図書室があります。壁一面の本はやや難しい本が多く、芸術系、小説系、写真集などです。館主の知性の表れです。本は女将の趣味だそうですが、ご主人いわく「少し多いのでそのうち減らしたいのだが…」。それは難しいと思います。

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こちらは食堂奥の部屋です。静謐な空間です。

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これらの被写体は建築家の中村好文(よしふみ)さんの設計です。氏は「普通の住宅、普通の別荘」「住宅巡礼」等の著作のある建築家(日大教授)で、「シンプルで住みやすい家」をめざされています。

かいとく丸は普通の民宿を改造され、独特の落ち着く空間に仕上がっています。宿のご主人も建築関係の方なのでしょうか。このご主人の対応は簡素・簡潔でこの空間とも符合するような気さえしました。

部屋は大きく夏には大勢の方々もかつては泊まっていたのでしょう。

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マイルドな塩味温泉は貸切のみ

かいとく丸は料理が有名ですが、温泉は民宿とは思えない洗練された貸切風呂です。豊富な源泉かけ流しで湯質もハイランクです。風呂は別棟になっていて二つの風呂の構造はほぼ同じで、ご主人の設計らしい。

一階に貸切風呂が二つあります。この理由は一日に3組しかお客をとらないからです。というのは普通なら男女別の風呂が定番です。でもカップルのお客さんが多いなら、各々を貸切にすれば気兼ねなく風呂に入れます。できそうでできない発想です。

風呂は二人にほどよい大きさで、外に向かって全面がガラスになっていってすこぶる開放的です。

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少し小さめの湯船なので湯船につかるとドーッとお湯が溢れます。でもふんだんに溢れているのですぐに満杯になります。とても新鮮な厳選掛け流しです。

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お湯は透明で湯温は体感で42度、味見すると塩の味です。海の横だから海水成分も混じっているでしょうが塩だけでないマイルドな味がします。温泉を濃縮した塩(「三浦(さんぽ)の塩」といいます)は松崎町で売っていました。

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泉質は湯上がりが気持ちのよいCa・Na-塩化物泉です。源泉は少し南に下った三浦地区にあるそうです。

和製オーベルジェともいわれる素材重視の美食

かいとく丸は実は温泉よりも料理のうまい民宿として注目されています。食事処にはテーブルが3卓ありました。見えない卓は6人掛けです。

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落ち着く静かな空間です。テーブルの下は掘りごたつ式の床は床暖房で快適でした。

食事は素材重視の海の幸です。タコのカルパッチョ、豆腐のように見えるチーズ、バジルソースの相性がいい焼きたてつぼ焼きで始まります。

次は名物の伊勢エビのお刺身です。ぷりぷり!甘い!新鮮!!自分で買っては絶対食べないのが伊勢エビです。

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続いてひらめのお造りはポン酢つき。厚めに切られたヒラメは甘くて一層こくがあります。これを引き立てるべく女将が発案したのは「生七味」、これが絶妙な味です。

これにハーブを一乗せしていただく。半透明のヒラメ。う〜んんん、こんなものがあったとはオドロキ!厚い身をしっかり口に含む味わいが深い。

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ついに伊勢エビのアメリケーヌが登場しました。

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フランスパンもついています。和風の民宿になぜ洋風が登場するのだろうか?などと思ってはいけません。パンをちぎりスープに浸して次々に口に放り込み、合わせてエビの白い身をいただく。甘いエビソースも口一杯に広がっていきます。

お腹がふくれてきましたが、そこに登場したのは大きな鯛でした。写真ではわかりませんがかなり大きな鯛!身が厚くふ〜っくらと焼き上がっている。焼きすぎず、レアすぎず、この「ふ〜っくら感」がただ者ではないですね。

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朝食は朝の光の中で静かな一日の始まり。朝の清々しい光に照らされた朝食は(自分では作らないから)贅沢なもの。

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夕食も朝食も派手さを押さえて簡素、ナチュラルです。

館内で気になった風景

訪れたのは2月、それでお雛様が飾ってありました。木目込みの真多呂人形です。

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館内には随所にアマリリスやゆり等が生けられていました。女将の好きな花に違いないはず。大柄の花は伊豆の海岸にふさわしい。

拡大撮影するとこの世のものとは思えない造形です。

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近くの海岸は日本のコートダジュール風

松崎町から岩地、石部、雲見と続く海岸は断崖の道が続きます。駿河湾は太平洋に続くので群青で透明な海が広がり、日本離れした絶景が続きます。脇見運転に気をつけましょう。

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開けた土地がないので集落は小さく時間が止まっている感じです。それがちょっとした秘境感を醸し出します。

次の写真は雲見海岸です。

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中央の沖には夫婦岩、その左手の岩は伊豆のスフィンクスでしょうか?海の奥には富士山が浮かびます。

松崎町はなまこ壁の街

松崎町はなまこ壁の家並みが残る落ち着いた街です。映画・ドラマにもなっています。「世界の中心で、愛を叫ぶ」(綾瀬はるか)のロケ地で、比較的最近では「とんび」。古い街並、蒼い海、山から流れる清流、畑もあって日本の縮図です。

次の写真は明治の商家「中瀬邸」です。

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おわりに

初めての西伊豆探訪、そこで最初に発見したのは「群青の海」でした。温泉は溢れる源泉かけ流しの貸し切りで、料理は地元の新鮮な魚介類。パブリックスペースは建築家・中村好文氏の手によるものです。

かいとく丸にはホームページはなく、一日三組限定でお子様は原則ご遠慮されています。小さな空間で静かなひと時を過ごす大人の宿です。一泊ニ食の標準で10000円、伊勢エビコースは13000円、アワビもつけば15000円とお値打ちです。

泉質はカルシウム・ナトリウムー塩化物泉、55.7℃、pH=7.4、蒸発残留物=12380mg/ℓ。

※この記事内容の詳細は「秘湯感動紀行 かいとく丸」で検索すれば見ることができます。

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2016年4月4日

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